モチベーションの全体像

ビジネスでは、「いかに」ということにこだわりがちで、「なぜ」について話し合うことはほとんどない。しかし、そもそも、なぜそれをしているかがわからなければ、ずば抜けてうまく行うのは難しいものだ

ダニエル・ピンク

モチベーションと聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべるでしょうか?

モチベーションは、活動自体に目的がある「内発的動機づけ」と、活動の外に目的がある「外発的動機づけ」に大きく分かれると言われています。

テレビゲームなど、何の報酬もなくても楽しいからやる、というものが、典型的な「内発的動機づけ」。気分がよくなるからランニングをするとか、人によっては楽しいから勉強が好き、というものも含まれます。

一方、これをやれば報酬が期待できるとか、逆にやらないと怒られるからやる、というような、動機が活動の外からもたらされるものが「外発的動機づけ」です。

「外発的動機」は、使い方によっては強力な威力を発揮します。

社内英語公用語化で知られる楽天は、2010年、階層ごとの目標スコアを設定しました。2012年には、当時の役員10名が、5か月でTOEIC800点を取らなければ会社を辞めるよう通達されました。以下は、『週刊ダイヤモンド』のウェブ記事からの抜粋です(一部省略・改変)。

楽天は英語公用語化を完全施行する時期を12年4月と決め、それまでの2年間は準備期間とした。だが、英語の勉強を課される一方で、業務が軽減されることはない。そのため、準備期間中の英語力アップの取り組みはまちまちで、中には本業の合間程度にしか勉強しない役員もいた。執行役員である濱野斗百礼氏はそんな1人だった。同氏のTOEICスコアは10年時点で420点。目標の800点からは大きく懸け離れていた。だが、「目標未達ならクビ」と宣告されたことで、もはやなりふりを構ってはいられなくなった。平日午前中は英語学校に通い、わずかでも隙間時間があればすべて英語学習に充てた。「1日平均で5~10時間は勉強した。人生の中でこれほど勉強したことはなかった」と濱野氏は振り返る。火事場のばか力というべきか、尻に火のついた冒頭の役員たちは皆、期限内にTOEIC800点を超えることができた。https://cakes.mu/posts/5620

このように「外発的動機」は使い方によって、強力な威力を発揮することがあります。しかし、こうした動機は、原動力となる懲罰や報酬が無くなったとき、減退しやすいという欠点があります。一方、「内発的動機」は自分の内側にあるため、外部に影響されにくく、長続きしやすい傾向があります。英語の学習自体が楽しかったり、英語が上達していくことにやりがいを感じているときは、報酬や懲罰の有無はあまり影響しないでしょう。

「内発的動機」と「外発的動機」については、Deci & Ryanの『自己決定理論』が有名ですが、研究者の市川はこれを含めた様々な動機付け理論を検討し、学習の文脈に適した、より広範な6つの動機づけを「学習動機の二要因モデル」として著書『学ぶ意欲の心理学』(PHP新書)の中で紹介しています。

6つの動機エンジン

『学習動機の二要因モデル』では、6つの学習動機づけを、内容との関係性と功利性という2つの要因から整理しています。それぞれの動機づけには、学習自体が楽しいからやる「充実志向」、知力を鍛えるためにやる「訓練志向」、他者との関係性・相互作用からやる「関係志向」、仕事や生活に生かすためにやる「実用志向」、プライドや競争心からやる「自尊志向」、報酬を得る手段としてやる「報酬志向」があります。

動機のエンジンはたくさん持っていた方が失速しにくく、また速く目標に到達できるはずですから、語学学習に際しても、自分の動機を多面的に捉え、それらを意識的に育てることが有効です。

今後のブログでは、これらの動機を伸ばしていく方法についてもお話ししていきたいと思います。

(この記事の内容は、筆者の実施する英語研修でも扱っています)

参考文献:
市川伸一(2001)『学ぶ意慾の心理学』PHP新書、
菊池洋匡, 秦一生(2019)『小学生の子が勉強にハマる方法』実務教育出版